弱虫

踏み切りの呼んでいる朝の再来だ
もう貴女の夢は見たくない
私に劣情以外の感情を気づかせてくれた貴女を
穢してしまう劣情に溢れた夢は見たくない
私の心の半分は貴女の周りを飛び回り
貴女を照らしている電球だ
残りの半分は光の群がる黒い蛾なのだ
光と燐粉で真っ白にしてしまう前に
去らなければと歩き出す私に
寒さと心寂しさは踵を返すのに良い言い訳だ
光の中にいる貴女を照らすのも
光を遮ってしまうのも
私のまだ小さな夜行虫の羽のせいだ
劣情の残っていた安堵感と
劣情の残っている焦燥感は
羽ばたきのリズムと共に加速していくのだった