サワータイム

アルコールの散歩は足が自然と前へ出る
総てを忘れて白痴になるにはどうすればいいのか
問いかけは秋の空へ吸い込まれて
天高く豚肥ゆる秋と洒落ているのだ
今日もご飯を食べた
きっと明日もご飯を食べる
明後日はご飯も食べる
明明後日はなんとご飯を食べるのだ
ゲシュタルト崩壊をしたご飯は
血となり、肉となり、骨となる
だが私は今日も明日も栄養失調を気取り
贅肉だけを無駄に貯めては夜に哭くのだろう
今日も一日、ごちそうさまでした

犬のいぬ生活

部屋には似たもの同士が並んでいる
顔のない犬は首を長くして私を見ている
私はその畏怖に怯え、眠れない夜なのだ
犬は何に怯えているのかと言えば私なのだろう?
私は何に怯えているのかと言えば犬なのだろう?
先生がおっしゃっている意味がよくわかりませんが
兎に角、ここに犬がいるんです
今、犬がいるんです
今、吠えているんです
今、栄えているんです
今、狂っているんです
今、死にました
それは私が死んだので犬はまだ生きています
眠れない深夜に保健所の扉が開き
連れて行かれるのはきっと私なのだ
オカリナを吹く準備は出来ている
さぁ、扉よ開くのだ
世迷言と妄言に塗りたくられた夜は明けて
もうお日様が天空高くに登っているので
私は先生のおっしゃるとおりにクスリを飲みます
あぁ、もう二度と、三度と、四度と
積み重なった錠剤は安眠だけを私にプレゼントしてくれました
私の友達は貴方だけなのです、おやすみなさい

ベーコンじゃないんです

私が油の水面に漂い眠るのを
三者の誰かが夢で見ている
私はいつでも見られている
誰の夢なのか誰も教えてくれないが
きっと貴方も、貴女も、貴男も
私の夢を見たんでしょう?
誹謗中傷の視線が緋色に光れば
私は今頃こんがりと焼けているんです
だから私を見ないでください
そっと粉チーズをふりかけてください
そしてパセリをふりかけて食卓に並べてください

プラモデル

腕がもげてしまった
足ももげてしまった
頭ももげてしまった
腰も、胸も、陰部もすべてもげてしまった
「私を組み立ててくれるのは誰だ?」
という問を空中に放り出してみた所
「それはきっと私なんでしょう」と
ボソッっと独り言が出てしまったので
ニヤニヤが止まらないのだ
今日はゲルググのプラモデルを買おうと思います

夜釣りの帰り道

夜蝉無く玲瓏の響く夜
ひたすらに続く一本道を
労働者の足で労働もせずに走るのだ
空では不気味な笑みを浮かべた月が
そっとビルの隙間から私を見ていた
ずっとこの日が続けばいいと
水面に走る橋に寝転がり
草木の戦ぎをぢっと見ていた
気づけば体は水面に浮かび
いつの間にか島の下に沈む
私は大地震よ怒れと島を殴ろうとした
だが体は無情にもずぶずぶと沈んで逝くのでした