蛾の夢

昨日の早朝から部屋を蛾人間が飛び回っている
撒き散らされた燐粉で脳味噌が腐っていくのがわかる
私のするべき事は何なのか?するべき事があるのだろう?
それすら曖昧になってしまっているのは何故なのだ?
可笑しく成っていく私を見ながら
蛾人間が笑っている
蛾人間が嘲っている
蛾人間が見つめている
蛾人間が羽ばたいている
蛾人間が止まっている
私の背中にへばり付いて離れないのは蛾人間の卵です
もうすぐ私は毛虫に喰われて居なくなってしまいます
その前にあの娘に会いたい
可笑しくなってしまう前にあの娘に会いたい
毛虫が繭になり産まれてくるのは誰の子でしょうか?
蛾の子だろうか?蝶の子だろうか?私の子だろうか?
そんな問いかけを空中に投げても蛾人間は拾ってくれず
ただ、薄ら笑いで宙返りを繰り返しているのだった