前略、お父さん

頭の上の植木鉢からパラノイヤの花が芽吹いてきています
そちらはまだまだ灼熱の地獄だと思いますが如何お過ごしですか?
僕はというと一人前のライトノベル作家になると決めて
家をロケット噴射で飛び出す前から何一つ変わっていません
変わった事と言えば髪の毛が少し伸びてドレッドヘアになりました
まだお父さんと暮らしていた頃は皮膚もあったかと思いますが
今は爛れてしまって変わりにプラスチックの鱗が全身を覆っていて
僕の様な体格ですから相撲取りに間違われる事も多くなりました
そんな時にはお父さんの知恵を思い出し眼球を穿り出して遊びます
そうすると体中の力が抜けて射精にも似た安心感が得れるのです
今日、突然この手紙を出したのは並々ならぬ理由があったのです
先日、亀乃甲羅駅から始発電車に乗っていたのですが
前日から降り注いだ芋焼酎の雨に打たれて私は大虎でした
炬燵猫駅で降りるつもりだったのですが朝の独りぼっちの電車内で
私は大鼾のトランペッターになってしまって寝過ごしてしまい
終点の鴻巣に着いた時にしまった!と思ったのです
私は電車に乗る前は全身が山吹色の全裸だったのですが
気づいた時には時遅し、既に私は燕尾服に身を包んでおりました
スリにあってしまって私は家も家庭も地位も名誉もお金も蒟蒻も
全部何もかもを失ってしまっていて呆けてしまったのです
私はこれはもう死ぬしかないと思い恩師である中原中也先生に
亀戸の小さなトップレスバーでエスペラント語で相談をしました
しかし気づけば私の頭のてっぺんからプロペラが生え出してきて
私は海の彼方へ「へいほー、へいほー」と飛んでいってしまいました
そして最後は大西洋の上空2メートルの所でイカロスさながらに
全身が溶けてしまってそれは真夏の花火の様に果てました
気づいた時には病院のベッドの上で瀬戸内寂聴に抱かれていました
そこで思ったのは「明日のご飯は螺子なのだろうか?」という事です
今日も明日も頭の中で取れてしまった螺子を食べる日々です
これでは家にいた頃と何一つとして変わりません
なので私は家庭用流しそうめん機の様な意味のないループをしたいのです
何が言いたいのかというとお父さんはまた僕と一緒に暮らしてくれますか?
約束します、もうお父さんに対する性的な暴力や殺人未遂は行いません
なのでもう一度だけ僕と甘い生活をしてくれませんか?
一生のお願いです、僕はここで断られたらオナニーするしかないいんです
お父さんの都合もあると思うのでじっくりと考えてください
長文乱文失礼いたしました、夏至までには返答いただけると嬉しいです

敬具