夜のセラピスト

突然に目が見える事に恐怖を覚えた
目は見なくてよい物を見てしまう
同時に耳が聞こえる事に恐怖を覚えた
耳は聞かなくてもよい物を聞いてしまう
したり顔で蝙蝠が私を見ているのは
超音波が私の脳髄から飛んでいるからだ
ソナーさえあれば私の落し物は見つかるかと思ったが
何を落としたかという記憶まで落とした私は
五感をすべて失うという語感を楽しみつつ
物を言わないただの死体になるのだろう