逆流

カンカン照りの日々が続いていくと脳が湯だち
全身に流れる血がもっともっと赤黒くなり
深夜の無意味ない徘徊に足が勝手に動き出したのです
コンビニの灯だけが頼りでした
でも今はそれも見えずに彷徨っています
真っ暗闇の脳味噌の中でモンシロチョウの交尾を見た
それを見て思考が溢れでてたまらないのに
それが言葉になるかといえばそうでもないのです
だから帰ってセンズリをしました
今日も一日が気持ちよく過ぎていくのだなと
あいも変わらず脳天気は今日も天晴なのでした

痣爆弾

貴女がより魅力的になっていた夜
釣合わない私の顔を便所の鏡で見た夜
輝いていた貴女の邪魔をしたくはないのです
ひっそりとビルの陰で暮らすのが私には似合う
総てを諦めれば私も貴女も幸せなのです
あぁ、自分につく嘘が上手になったなと瞼を閉じます
夢の中では貴女がやはり輝いていました
夢と現実の差は何か?
それは私も輝いていたという事です
貴女を汚してごめんなさい

蛾の夢

昨日の早朝から部屋を蛾人間が飛び回っている
撒き散らされた燐粉で脳味噌が腐っていくのがわかる
私のするべき事は何なのか?するべき事があるのだろう?
それすら曖昧になってしまっているのは何故なのだ?
可笑しく成っていく私を見ながら
蛾人間が笑っている
蛾人間が嘲っている
蛾人間が見つめている
蛾人間が羽ばたいている
蛾人間が止まっている
私の背中にへばり付いて離れないのは蛾人間の卵です
もうすぐ私は毛虫に喰われて居なくなってしまいます
その前にあの娘に会いたい
可笑しくなってしまう前にあの娘に会いたい
毛虫が繭になり産まれてくるのは誰の子でしょうか?
蛾の子だろうか?蝶の子だろうか?私の子だろうか?
そんな問いかけを空中に投げても蛾人間は拾ってくれず
ただ、薄ら笑いで宙返りを繰り返しているのだった

雑音フェティッシュ

脳髄に踏み切りのカンカン音が響き渡り
ビルの谷間の一休みも出来ないのかと辟易とします
カラスがカァカァと空中で旋回を繰り返し
隣の部屋の押さえられないFコードが響き
ピーポーピーポーと救急車がお迎えにあがった時
私は貴女の帽子をそっと被りました
音が聞こえない世界へ早く行ければいいのになと
貴女の微笑む顔がノイズに塗れて
あぁ、世界はこんなにも綺麗なんだなとほくそ笑むのでした

触られたくないわ

10年以上前の一言が今の貴女から発せられます
三つ子の魂は百までというのなら私の魂は必要ないと
頭蓋に響き渡る残響にも勝てそうにありません
弱き私の前に気持ち悪き私なのだなと
目の前に転がった死体は膨れて気持ち悪くなるのです
死体が気持ち悪くなるのなら魂は浄化されるのか?
そんな杞憂を前に睡眠薬の効き目が切れてきました
今日も一日を嫌な気持ちで嫌な人間として過ごすのだ
あぁ、今日も明日も明後日も太陽も月も出なければいいのにと
戯言は脳味噌の中で貴女の言葉と交わりながら響き渡り
まだ見ぬ遠くの地への憧れをどんどんと強くしていくのでした