布団に入ると何時ぞやの白い巨人が私を見下ろしていた
視線を合わさないように窓の方に視線をやれば
マグダラのマリアが立っていた
背後に稚児の背中に視線を感じた
その視線は蛞蝓の様に背中にへばり付いている
頭の中の井戸からは腕の5本以上ある異様に頭部の巨大な
蜘蛛の様な男が這い出そうとしていた
私の視線は私の視線でなくなり開いた瞳孔が目紛しく
誰かの視線と睨めっこをしていた
私はそんな混沌とした思想の中で


「私は誰かを殺せるだろうか
 私には殺せないだろう
 私はむしろ殺されたいのだ
 しかし殺されることは恐怖だ
 私はいつか愛すべき人を殺してしまうのでは
 そんな虚しいただのキチガイに成り果てるのでは」


と言いし得ぬ満更の杞憂でもない事を考えていた




黄色いジャンパーを着てポマードでびっしりと決めた
七三分けの小人がポケットに手を突っ込み
私に視線を送り目配せしているという事は
この事は書いてはいけなかったのかもしれない