逃げ水

この蒸し蒸しした曇天の空を夜魔が横切った。
この暑さには参る。
暑さの前には、いくら虚勢を張っても平伏してしまうのだ。
これほど恐ろしい物はないのだ。
夏の恐ろしさを知らない無知な若者は逃げ水はどこまで行っても
水滴すら落としてはくれないと気づくまでは虚勢を張り続ければいいのだ。
そして絶望の果てに枯れ果ててしまえ。
だがそんな事を言っていたら昨今の若者は八割は枯れ果ててしまうのだろう。
それでもいいのだ。高齢化社会には扇子しか残らない。
この暑さを産むクーラーの熱を無くしてくれる社会は二割の優秀な若者に
希望の兆しを帰してくれるだろう。
だが、それも逃げ水だ。
二割の若者の何割が気づいてくれるのだろうか。