鮑の背中

背中に何か張り付いている
それが何かはわからないのだが不思議と恐怖もない
むしろ何が張り付いているのだろうという想像が
眠れない夜の布団の中でぐるぐると回るのを眺めている
重さからは赤子か?感触からは巨大な鮑か?
その様な物が張り付いていたら常人ならば発狂するだろうが
如何せん、私は狂人な者であるので発狂する余地もなく
既に狂い尽くされた脳髄に走る背中の感触を楽しむしかないのだ
思えばしばらくは狂っている事が楽しくてしょうがない時期がある
それはどんなタイミングなのかわからないが
幻聴が聞こえれば幻聴と喧嘩をしてみたり
幻覚が見えれば幻覚に殴りかかっていったり
私が狂っているのは狂っているせいだと実感できるのが夜中の3時過ぎだ
背中の鮑の赤子がどんどんと重たくなっていっているが
これは私の親心からすればすくすくと育っていってくれていると
感動して世界柔道谷亮子のように涙が止まらないのだ
もしかしたら背中に張り付いているのは谷亮子なのではないかと
思想が右に系統してきた今に私は更に狂えそうな気がして
谷亮子の鮑に無意味な愛撫などを背中越しにして見るものの
胸をくすぐっただけの愛撫はどこにも響かずに消えていく
それはまるで又吉イエスの様な泡沫候補だったのだ
眠れない夜は選挙カーの演説だ
形だけは成しているが中身がない
それは私の脳みそですと笑いが止まらなくなるのが深夜の不思議だ
同時にケタケタと笑う背中の谷亮子も恐怖になってきた今こそ
睡眠薬という現代の逃げの道具を使いどこまでも果てしない逃走劇を
まるでハリウッド映画のカーチェイスの様にダラダラと走らせ
居眠り運転で人生の免停を食らいたいと思います